アメリカはどのようにして覇権国家となったのだろうか?
世界には、日本が承認しているだけも世界には196もの国が存在してる。
当然日本が未承認の国もあるため、世界には少なくとも196ヵ国以上は存在していることとなる。
アメリカはこの196ヵ国以上の国々を実質的に支配するほどの力を有していることとなる。
地球はアメリカ様のものだといわんばかりであり、これに唯一対抗できそうな国は現在では中国くらいであろうが、現状では両国にはまだまだ大きな差がある。
なぜアメリカはこれほどの覇権国家になったのだろうか。その仕組みを解き明かしてみよう。
歴史的過程
さて、まずアメリカが覇権を取るまでの歴史という縦軸の過程をみていこう。
もともとアメリカはイギリスの植民地であった。ここから独立をかちとり、アメリカという国が誕生する。
その後にアメリカは国内の領土を西へと広げていくこととなる。
アメリカが国土を獲得したことは、のちのちアメリカの覇権国家になるための重要な布石となる。
第一次世界大戦が勃発すると、アメリカは消極的な態度をみせた。
この時点ではいまのアメリカと違い、他国との干渉は避けていたのである。
これが第二次世界大戦の時点で変わってくる。
ナチスドイツに圧迫されていたチャーチルは大国アメリカの参戦を熱望していた。
日本が真珠湾を攻撃したため、アメリカが世界大戦に参戦する。
かつて大英帝国は世界の覇権国家であったが、第二次世界大戦の時点でチャーチルはもはや小さな島国でしかないイギリスにその地位はないことを確信していた。
戦後はアメリカとソ連というふたつの大陸が支配することを理解していた。
そしてドイツ・日本を下したのちに、国際裁判でアメリカは積極的に戦後世界の構築に対してリーダーシップをきることとなる。
この時点で世界はアメリカ優位にたったといえるだろう。
そしてチャーチルが鉄のカーテンと称した、アメリカとソ連を代表とした冷戦がはじまる。
ソ連が崩壊するとともに、アメリカがこの戦争に勝利することとなる。
こうしてアメリカは戦争によって現在の覇権国家たる地位を確立したこととなる。
なんにせよ戦争とは強力な外交手段である。
戦争にかつということが、その国を覇権国家たらしめるのは、古代のアレキサンダーの時代から続いている。
ここまでがアメリカが覇権国家たりえた縦軸での説明である。
ここにより具体的な横軸の説明を加えていこう。
つまりより詳細に、どのように戦後覇権国家たる地位を築いたかの説明である。
この横軸の説明のためには、イマニュエル・ウォーラーステインの見解から紹介しよう。
イマニュエル・ウォーラーステインとはアメリカの社会学者でり、経済史家である。「世界システム論」を提唱したことで有名であり、2019年とつい最近になくなったのだが、それまでイェール大学の上級研究員であった。
彼は主に3つの理由をあげている。
簡単に要約すると、経済、同盟関係、軍事、この3つの側面で覇権国家の基礎を築いたとされている。
What enabled the United States to put these structures in place were three things:
1) the overwhelming edge in economic efficiency of U.S.-based productive enterprises;
2) the network of alliances—especially NATO and the US-Japan Security Treaty—which guaranteed automatic political support of U.S. positions in the U.N. and elsewhere, reinforced by an ideological rhetoric (the “free world”) to which the allies of the U.S. were as committed as it was; and
3) a preponderance in the military sphere based on U.S. control of nuclear weapons, combined with the so-called ”balance of terror” with the Soviet Union which ensured that neither side in the so-called Cold War would use these nuclear weapons against the other.
The End of the Beginning Immanuel Wallerstein
経済的な組み込み
1) the overwhelming edge in economic efficiency of U.S.-based productive enterprises;
国内の産業が圧倒的な経済効率で他国を制したこと。
米国の生産的企業が圧倒的に他国を制したことである。
いまではGDPは269億であり、長年にわたって1位を維持している。一時米国にとって脅威となった日本はいまでは42億であり、6倍もの差がある。
現在では代わりに中国が脅威となっているが、177憶とその差は1.5倍である。しかし中国は一人当たりのGDPが極端に低くなるため、その差はまだ歴然とあるとみてよいだろう。
なによりも覇権国家となるためには、国境を越境して他国を圧倒することが重要となる。
世界中のどこにいってもアメリカのマクドナルドやスターバックスをみることができる。
Windowsやマックは世界中のコンプーピューターを埋め尽くしており、ユーチューブやグーグルも同じように世界を覆いつくしている。
世界中の国がアメリカの国内企業に経済的に組み込まれており、抜け出すことが特殊な事情がなくては不可能になっている。
ウクライナに侵攻してアメリカ企業が撤退したロシアでは、戦争に諦念を抱いていたモスクワ市民が、侵略の痛手をもっとも感じた瞬間でもあった。
世界各国はアメリカ企業を使用することによって、世界の富はアメリカへと収束し、もはやアメリカ企業なくして生活ができない体になってしまっている。
軍事同盟のネットワーク
2) the network of alliances—especially NATO and the US-Japan Security Treaty—which guaranteed automatic political support of U.S.
positions in the U.N. and elsewhere, reinforced by an ideological rhetoric (the “free world”) to which the allies of the U.S. were as committed as it was; and
NATOや日米同盟のような同盟のネットワークをアメリカは結んでおり、これらの同名が自動的にアメリカの味方をしてくれるのである。つまりこれらの同盟のおかげてアメリカは国連などでの地位が確定されており、同盟国はアメリカを自動的に指示してくれるシステムができあがっているのだ。
アメリカがなぜ世界の警察を続けるのか、その真の価値はここにあるだろう。正義感からアメリカは他国に米軍を配置しているのではなく、そうすることで明確な覇権を握ることができるからだ。
これはロシアのウクライナ戦争をみればより明確に浮き彫りになる。日本を含めた西洋諸国はアメリカに足並みを揃えてロシアの暴挙に反対をした。SWIFTの停止などかつてない程の制裁を科した。だが一方でアメリカもイラク侵攻という同じような暴挙をしたのだが、そのことは今ではきれいに忘れ去られている。
アメリカの同盟国
もっとも強力かつ重要なのはNATOである。
これはかつて対露、対共産主義をアイデンティティーに形成された軍事同盟である。それがいまでは旧共産圏の東ヨーロッパのほとんどが加盟する状況になっており、ロシアを端まで追いやることとなった。旧ソ連に愛慕をおぼえるプーチン政権のような回顧主義政権には非常な脅威となっている。
プーチン政権の暴挙によりその存在感が一層にまし、ますます肥大化している。
アジア圏では、日本、韓国、フィリピンなどが主要な同盟国である。ほかにも台湾とは台湾関係法というゆるい軍事同盟のようなものを結んでいる。
イギリス、オーストラリアとはオーカスという三国軍事同盟を結んでいる。
当然であるがアメリカの北に位置するカナダとも軍事同盟を結んでおり、カナダのアメリカへの軍事依存度はやや日本にも似たような感がある。
これによって西側諸国とあいまいに定義される国をアメリカが牛耳っていることが理解される。西側諸国を牛耳ることは現状では世界のイニシアチブをとるに等しいわけである。
3) a preponderance in the military sphere based on U.S. control of nuclear weapons, combined with the so-called ”balance of terror” with the Soviet Union which ensured that neither side in the so-called Cold War would use these nuclear weapons against the other.
核兵器に基づいた軍事優位性をアメリカが確立したことである。
そして冷戦を通してロシアとも核兵器を使用しないことが保証されたこともである。
さて、核兵器の数だけをみれば2023年時点でアメリカは5244、ロシアは5889である。ロシアは核兵器の開発にかなりの軍事予算を割いているといっていい。一方で中国は410と圧倒的に数がおち、フランスはさらに300以下と減っていく。
軍事費用に関しては米国を他国を圧倒しており、実質的にアメリカ一強ともいえるほどの軍事力を有している。
戦争とは強力な外交手段であり、相手の意思に関係なく自国の意思を押し付ける権力をもっている。そのため覇権国たるには核兵器と軍事力においてTOPに立つ必要があるわけだ。
以上がイマニュエル・ウォーラーステインによるアメリカが覇権をとった分析である。
この世界で覇権をとるには、経済・軍事同盟・核を主軸とした軍事力、この3つで優位にたつことが重要であることがわかる。
内化の力
さて、これはイマニュエル・ウォーラーステインの分析はかなりリアリズムに基づいている。
だが普通の市民にとっては政治の世界は遠いものである。
世界中からアメリカが支持されている理由は、エンターテイメントの力も忘れてはならない。
特に映画はプロパガンダとしての力をもっている。
つまり内側から人々の感情を操作できるのである。
映画用語ではこれをモンタージュと呼んでいる。
映画監督のゴダールは、このモンタージュはあまりにも危険なものであると彼の映画講義で呼べているほど、映画の強力な装置なのである。
これに目をつけたのがナチスドイツである。
ナチスドイツは映画の力を積極的に使用した。
映画とは人々を内面から変化させることができる。
世界中の人々がハリウッド映画に熱狂することによって、内側からアメリカに共感できるようになっているのだ。
ハリウッド産業はもともと映画産業を牛耳っていた東海岸のエジソンの力から逃れるために、ユダヤ人たちが西海岸で映画産業を興したことからはじまる。
そのハリウッドがいまや世界中のアメリカ化の中心地となっているといってもいいだろう。
もちろん音楽の力も大きいが、アメリカが世界を支配したのは、常に時代にあった新しいスタイルを打ち出しているからだろう。
ハリウッドや音楽だけでなく、マクドナルドやスターバックス、SNSなどのすぐれたインターネットサービスなど、人々がアメリカを好ましいと思えるスタイルを常にアメリカは世界に向けて打ち出している。
この点が大衆からアメリカが支持を受ける最大の要因である。
まとめ
以上がアメリカがいかにして現代の覇権国家たる地位にたったかのレポートである。
まず歴史的そもそもアメリカは内向きであったが、第二次世界大戦の勝利をきっかけに世界のイニシアチブを前面に出すようになり、ソ連に勝利したことにより世界の覇権国家となった。
そして内側をより詳細に分析すると、経済、軍事同盟、核を中心とした軍事力の3つの側面で世界の発言力をコントロールできるようにしたのだ。
これにハリウッド映画やファストフード、インターネットサービスなど、現代的な新しいスタイルを提供し続けることによって、大衆の支持を獲得することに成功した。
これらがアメリカが覇権国家たる理由である。
しかしアメリカが常に優位に立つことによって、その同盟国は恩恵にあずかれるのだが、そうでない国々がある。
それが中国、インド、ブラジルなどの第三国である。
ロシアのウクライナ侵攻でも一定の国がアメリカと足並みをそろえなかった理由はここにある。
アメリカのもっとも忠実な同盟国である日本の内側からではこの流れを理解するのは難しいだろう。
というのも日本にとってはアメリカが覇権国家であることは非常に重要であるからだ。
だが確かにアメリカの恩恵を受けられなかった第三国が力をつけ始めているいま、いつかはアメリカも日本もその痛手を食らう日がくるのは、そう遠い日ではないかもしれない。
コメント